新米日記18粒目 【漫画の主人公も適応障害かも?前編】

こんにちは、新米臨床心理士のM美です📚

読書の秋ですね!📕
読むといっても私の場合は今も昔も漫画ばかりなのですが、大切なことは漫画から学んだように感じます。主人公や登場人物に共感したり、こころを揺さぶられたり、ショックを受けたりする体験は、自分とは異なった人生を追体験するようです。現実に起こっているわけではないのですが、この感情や気づきはたしかに現実に起こっていることなんですよね。全然共感できない!と感じるキャラクターもたくさんいて、そういうのは現実に似ていますね。物語に触れるってとてもエネルギーを使う行為なんだなあ、としみじみ感じています。

今週のテーマは【適応障害】です!
幅広い病態に使われる診断名でもありますので、より詳しくお伝えしていきたいと思います。

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M美:「今週もI先生をお呼びしました!よろしくお願い致します。」
I先生:「よろしくお願いします。」

М美:「今週のテーマは【適応障害】です。前回の新米日記で適応障害とは、ある出来事があり、それに適応する努力に失敗した際に心身の症状として現れるという考え方が元になっていると教えてくださいましたね!」
I先生:「適応障害はその人の特性と環境との相互作用が上手くいかないことによる症状です。そこには4つの不調和が考えられます。」
M美:「その人の得意なことや苦手なこと、生まれ持った性質などが周りの環境とが上手くかみ合わないことで起こるものなんですね!4つの不調和とは何なんでしょう?」
I先生:「1つは周囲の環境ですね。職場や学校、生活環境などに問題がある場合です。」
М美:「いわゆるブラック企業というものでしょうか???」
I先生:「劣悪な労働環境という意味ではそう言えるでしょう。また、イジメや孤立、家庭内不和、転職や倒産などもそれらに含まれます。」

I先生:「2つ目は本人に問題がある場合ですね。仕事熱心すぎたり、社会的スキルやコミュニケーション能力、問題解決能力が稚拙であること、ストレス耐性が低いこと、発達障害がこれらに含まれます。」
М美:「仕事熱心が問題になるというのは一見驚きですが、完璧主義や責任感が強いという特性は仕事上では好まれ、仕事熱心だと評価される素晴らしい特性ですが、反面うつになりやすい性格傾向とも言われていますので注意が必要ですね。」
I先生:「できる人に仕事が流れていくという社会の仕組みがありますので流れ着く仕事を自分でコントロールすることはとても大切なことですね。会社という組織の性質上、あなたが見逃したとしても絶対誰かが拾うんです。そうしないと会社として成り立ちませんからね。」
М美:「『できちゃうから』といつもフルパワーであれこれやってしまうことは『頑張りすぎ』であることを知ってほしいですね。有名な赤い帽子の配管工のスター状態ですら必ず終わりがやってきますからね!あれって意外と堅実に進んでいった方がクリアできるんですよね。」
I先生:「何の話をしているか私にはわかりませんが伝わる人には伝わるんでしょうね。」

I先生:「3つ目は周囲の環境と本人の双方に問題がある場合ですね。」
М美:「1つ目と2つ目が組み合わさった場合という事ですね。ブラック企業でお勤めの頑張り屋さんという構図はたしかによくお見掛けするように感じます。」
I先生:「そうですね。また、家庭が安心できる場所ではない上に仕事でもうまくいかないという逃げ場がない状態に陥っている方もいらっしゃいますね。」

I先生:「4つ目は周囲の環境も本人も悪くない場合ですね。」
М美:「え!それってどういうことですか?」
I先生:「つまり相性が悪いという事です。」
М美:「あぁー…どうすることもできないやつですね。お花の匂いが苦手な人がお花屋さんの勤務に決まったら頭痛や吐き気という症状に悩まされ、作業効率が落ちるかもしれません。しかし、それは周囲の環境にも本人にも問題がない、ただ相性が悪かったというだけの話ですもんね。お花の匂いがしない場所ではいつも通りお仕事できるのであれば、ケーキ屋さんの勤務に変えればいいんですよね!クリームやチョコでもお花は作れますし!」

I先生:「ちなみに大うつ病と適応障害の違いって分かりますか?」
М美:「え…?うーん…なんだろう?大うつ病も適応障害も脳のエネルギーが減ってしまい、疲弊している状態ですよね?」
I先生:「そうですね。では違いについてご説明しましょう。大うつ病のきっかけは生活の変化と言われています。外的出来事をきっかけに悩み、出来事に過剰に適応しようとしてエネルギーをたくさん浪費します。その結果、抑うつ状態となり、エネルギーが枯渇したどん底には自分に対する不安と焦燥が症状として表れます。一方、適応障害は不安からスタートします。外的出来事に対して不安に陥り、思い悩むといった自分の内側、私的出来事によってエネルギーを大量に浪費し疲弊します。結果、抑うつ状態となりますが、ストレスとなる出来事を回避するため過剰適応しない分、どん底にはなりにくい特徴があります。」
М美:「どちらも不安が症状の特徴として挙げられますが、その不安に陥るプロセスが全然違うんですね!」
I先生:「海外の研究によると、うつ病の患者の85%が不安症状を合併しており、逆に不安障害の患者の90%がうつ症状を合併しているんですよ。適応障害のガイドラインには①抑うつ気分を伴うもの、②不安を伴うもの、③不安と抑うつ気分の混合が伴うものといった症状の違いが挙げられています。つまり、不安と抑うつ気分のどちらが優勢に症状として表れているかという問題になってくるんですね。」
М美:「なるほど!もしかしたらうつ病と診断されていても適応障害の抑うつ気分が優勢なパターンかもしれないというわけですね。」
I先生:「大うつ病と適応障害では治療方針も違ってきますので、しっかり鑑別することが重要ですね。大うつ病の場合は一旦社会から離れ、休養をとり立て直すという方針になりますが、適応障害の場合必要となってくるのは環境の調整です。」
М美:「先ほどの不調和の話と繋がってきましたね!適応障害の場合、不安からスタートしているわけでうつという症状は結果でしかないんですね。」
I先生:「その通り。なのでうつ症状が改善されてくると不安が顔を出すようになるんですよ。バロメーターみたいですよね。」
М美:「つまり適応障害はある出来事や状況に対して本人が嫌な出来事だと解釈することで思い悩んだり、不安になったりすることによって引き起こされているストレス反応ということですね?」
I先生:「そうです。新米日記の4粒目と5粒目でストレスについてお話しましたがまさにそのストレス反応が引き起こされ、そしてそれが現在まで続いている状態なのです!」

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いかがでしたでしょうか?
思いのほか長くなってしまったので、前半・後半に分けます!
来週は、適応障害のきっかけにもなりうるストレスを上手く対処するために知っておくべきポイントについてお伝えしたいと思います。

それでは、また来週〜♪

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