新米日記 7粒目【知っているようで知らなかった自律神経・後編】



こんにちは、新米臨床心理士のM美です☔

全国的に暑い日と大雨の日が交互に続いていますね。
冷たすぎる飲み物や食べ物を避け、あまり身体が冷えすぎないよう注意しましょう。

前回に引き続き今週のテーマは【自律神経・後編】!
知識を身に着け、気だるい梅雨を乗り切りましょう!!

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M美:「今週も引き続き、I先生にお話をお聞きしていきたいと思います。よろしくお願いします!」
I先生:「よろしくお願いします。先週は自律神経の基本的なお話をしましたね。」
M美:「はい、交感神経と副交感神経のそれぞれの働きや自律神経失調症についてお話いただきました!」
I先生:「今回はポリヴェーガル理論、日本語訳で二重迷走神経理論と呼ばれる新しい考え方を少し紹介したいと思います。」
M美:(ポリ…???迷走…???なんだが難しそうだなあ…)よろしくお願いします!」

I先生:「自律神経系は、交感神経と副交感神経の両者のバランスによって、身体を常に一定に保つシステムとして考えられてきました。ポリヴェーガル理論を提唱したポージェスさんは自律神経系を交感神経と副交感神経、そして『社会神経系』という新しい神経系で成り立っており、この3つの神経系が一体となって環境への対応や危機管理のシステムとして働いていると考えたのです。」

M美:「『社会神経系』???

I先生:「『社会神経系』は、三叉神経、顔面神経、舌咽神経、副神経そして迷走神経から成り立つ神経系です。私たちが物を食べたり、話したり、聞いたり、表情を作ったりするための神経です。」
M美:「つまり他者と関わること、コミュニケーションに関係する神経ということですね!」
I先生:「人間は社会的な存在であることがすでに我々の神経システムの中にインプットされているんですね。」
M美:「社会的な動物であることが心理的なレベルではなく身体的なレベルでインプットされている…面白いですね!!!もっと教えてください!」

I先生:「ではまず迷走神経から説明しましょう。脳から脊髄を走る迷走神経はもっとも大きな神経で、内臓のほとんどに繋がっています。また脳の中の迷走神経は、腹側迷走神経と背側迷走神経に分けることが出来ます。腹側迷走神経は情報伝達を得意とするため、コミュニケーションに特化しています。つまり『社会的関わり反応』を引き起こす神経と言えるでしょう。一方、背側迷走神経は旧来の副交感神経のことですので『フリーズ反応』を引き起こします。ちなみに交感神経は『闘争or逃走反応』を引き起こします。」

M美:「んんん???『闘争or逃走反応』は前回のお話の中で少し触れたのでなんとなくわかるのですが、『社会的関わり反応』や『フリーズ反応』とは何ですか?」

I先生:「1つ1つ説明しましょう。これらの反応はすべて生命が危機に直面した際に引き起こされる反応です。つまり理論的なプロセスを踏まない、生理的な反応のことを指しています。」
M美:「身体が自分を守るための本能的な反応ということですね!」
I先生:「『社会的関わり反応』とは、腹側迷走神経や三叉神経、顔面神経、舌咽神経、副神経といった社会神経が機能することよって引き起こされる反応です。これは動物の進化の中で1番新しいものであり、ほ乳類、特に霊長類に見られます。次に『闘争or逃走反応』ですが、これは交感神経が機能することで引き起こされる反応であり、脊椎動物になって発生したものです。動物の進化的には2番目ですね。最後に『フリーズ反応』ですが、これは背側迷走神経(副交感神経)が機能することで引き起こされる反応で、無脊椎動物を起源とする1番古いものと言えます。凍り付きや生命活動のシャットダウンがこれに当たります。危機に直面した場合、我々はより進化の段階が新しい神経系で対処していきます。」

M美:「つまり社会神経系の『社会的関わり反応』で対処できなかった場合は交感神経系の『闘争or逃走反応』、それでも対処しきれなかったら副交感神経系の『フリーズ反応』で対処するということでしょうか?」
I先生:「そのとおりです!社会神経系が機能しているとき、我々はゆったりと話して穏やかな表情や態度を取ることができるので落ち着いている状態です。交感神経優位の過覚醒状態でも副交感神経優位の低覚醒状態でもありません。この状態では闘争&逃走、凍り付きやシャットダウンといった危機への対処反応を取る必要がないので、交感神経と副交感神経は身体の維持に専念することが出来ます。」
M美:「社会神経が働くことで交感神経と副交感神経は健康を維持したり身体の成長のために働くことができるというわけですね!」
I先生:「このように過覚醒でも低覚醒でもない適度な覚醒状態を『耐性領域』と言います。これは耐えられるストレスの範囲のことを指しています。」

M美:「ん?ということはこの『耐性領域』が広ければ広いほど状況への適応能力を持っているということですか???」

I先生:「そういうことです。『闘争or逃走反応』が起こっているとき、我々は危険な感じがしたりパニックになったり衝動的になったり競争的な思考に陥ったり極度に警戒したり受身になったりします。一方、『フリーズ反応』が起こっているとき、我々は無感覚になり感情が欠如し、何もかもが不可能に感じたり、死んだような状態に感じられたり他者との連携感が感じられなかったりします。どちらも身体が自分を守っている反応ですが、多くのエネルギーを浪費しますし、毎度毎度では自律神経のバランスを崩してしまいます。」
M美:「いつも戦闘態勢なのは疲れてしまいますよね…『耐性領域』を広くする方法はあるんですか???」
I先生:「優しい眼差し、にこやかな表情や笑顔、優しい言葉や声、優しい雰囲気、心配りをこころがけましょう。」
М美:「え!!…あ、そっか!社会神経系を刺激してあげればいいんですね!」
I先生:「そうです。たとえば、社会神経系である顔面神経は顔の表情や味覚を司る神経なので優しい眼差しやにこやかな表情なのです。社会神経系を刺激するには、背伸びをしてあくびをするのもいいんですよ。」
М美:「確かに背伸びをしてあくびをするとホッとしますし、落ち着きますよね。」

М美:「I先生、本日はありがとうございました!」 
I先生:「ご自身の状況や状態を理解・判断する1つの考え方として役立ててみてくださいね。」

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いかがでしたか?
難しいところもあったと思いますが、ポリヴェーガル理論は、私たち人間という存在の新しい理解の可能性を示すとても魅力的な理論ですね。
ぜひ、ご自身や他者の理解に役立ててみてください!

 

以下にポリヴェーガル理論の詳しい解説をしてくれている文書を載せておくのでそちらも合わせて読んでみてください。

http://www.banyantree8.com/blog/images_mt/Polyvagaltheory1215.pdf

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